昨年日本でも話題となった中国の外国人就労ビザ(Zビザ)条件の変更。
基準が厳格化され、点数ともとにランク分けされることになり、現在中国で働いている日本人で新たな就業ビザ条件に満たない方も多く、戦々恐々としている方も多くいます。
しかし、実際はほとんど何も変わらず、以前のビザ条件も適用されるという情報も出てきており、情報が錯綜している状況です(2017年3月現在)。
そこで、この記事では、何で変更されるのか、本当に変更されるのかなど気になる情報含め、今の中国の就業ビザ条件の状況や取得方法をご紹介したいと思います。
中国における就業・就労ビザ(査証)の種類
まず最初に中国でビジネスをするための就業・就労ビザ(査証)の種類を確認したいと思います。
主に目的に応じて以下の種類に分かれます。
Rビザ・・・中国が認める外国人高度人材・専門分野人材
Mビザ・・・中国における商業貿易を目的とした活動する人
Fビザ・・・中国における交流・訪問・視察等を目的とする人
※2017年4月からの新条件ではRビザとZビザが統合されます。
ちなみに、観光の場合は15日間まではノービザで大丈夫です。Lビザと言う30日間滞在可能(ビザ申請必要)なビザもあります。
通常中国で働く場合は、Zビザ(就労ビザ)となります。
2017年3月までの就労ビザ(Zビザ)の条件
外国人の就労というのは、現地人の就業にも大きな影響を与えるため、中国だけではなく、各国のビザ(査証)条件というのは頻繁に変更されます。
以前の条件(2017年3月まで)は、
- 18歳以上60歳未満就業するための身体(健康)に問題がない
- 犯罪歴がない
- 就業先が決まっている
- パスポートを持っている
- 専門的なスキル(※)を持っている
※目安と言われていたのは学士以上の学歴(大卒以上)で就業経験が2年以上となります。
が基本的な条件と言われていました。実際はもっと細かく触れられていますが、上記の条件を満たせば、基本的には就労ビザが取得できる状況でした。
※上記は明確な定めというよりも、あくまで目安に近い条件です。地域や省によっても条件が若干異なり、また就業先企業や個人、その時の日中関係などによっては、条件を満たしていても取得ができない場合などもあるようです。
ちなみに、中国語になりますが、上海人力資源局という上海の就業を管理している政府組織のWEBサイトに掲載されていた変更前のビザ条件です。
第七条 外国人在中国就业须具备下列条件:
(一)年满18周岁,身体健康;
(二)具有从事其工作所必须的专业技能和相应的工作经历;
(三)无犯罪记录;
(四)有确定的聘用单位;
(五)持有有效护照或能代替护照的其他国际旅行证件(以下简称代替护照的证件)。
そして、2017年4月から本格施行される就労ビザ条件においては、上記よりも、さらに条件が明確化・厳格化され、就労ビザの発給に制限をかけると中国政府より昨年(2016年)に発表されました。
2017年4月からの就労ビザ(Zビザ)の条件/外国人就労許可新制度
新制度への変更点
新制度への変更点は主には以下の2つとなります。
1、2証の統合
- 入国前に取得をする外国人就業許可証と外国専門家来華工作許可証を外国人工作許可通知へ一本化
- 入国後の外国人就業証と外国人専門家証を外国人工作許可証へ一本化
これにより、これまでバラバラだった所轄機関の統一を図り、政府内のシステムの統合され、ウェブで通知を見れるようになり、大きくオペレーションが改善されます。
2、点数によるランク(分類)分けの導入
職歴経験、勤務年数、年収、年齢などを項目分けし、項目ごとに点数化。
その点数の総合点をもとに、人材レベルをA類、B類、C類の3つにランクが分かれ、このランクにそって就労ビザ発給の可否が判断されます。
A類、B類、C類、ランクによって何が違う?
A類
A類は「ハイレベルなスキルを有する人材」となり、中国政府も居住を奨励したいようなレベルの人材となります。
具体的には、
- 国際的な賞の受賞者(ノーベル賞受賞者、その他各国の権威ある賞の受賞者)
- フォーチュングローバル500企業(※)の技術者や管理職(日本ではトヨタや三菱商事など)
- ランク分け点数が85点以上(点数表は後述)
等となります。
※フォーチュングローバル500企業に関して詳しくはコチラ⇒ Fortune 2016 Global 500
B類
B類は「専門的なスキルを有する人材」となり、その時の国策に応じて適宜調整・制御がされる人材となります。
具体的には、
- ランク分け点数が60点以上
- 学士以上の学位(大卒)かつ2年以上の関連職務経験がある管理職や専門技術職
等となります。
C類
C類は「専門的なスキルを持たない人材」となり、今後居住が制限されていく人材となります。
具体的には、
- ランク分け点数が60点未満
- 季節性労働や臨時的業務に従事する人材
等となります。
ランク分け点数表
項目ごとの基準と点数が設けられ、その合計点でA~C類にランク分けをされます。
- A類:85~120点
- B類:60~84点
- C類:59点以下
C類の場合、中国にある日本企業で働く駐在員や現地採用の方だと就労ビザが取得できない可能性が高いです。
B類とC類のボーダーラインにいる日本人の方が相当数いるため、就労ビザ申請前にどのランクに位置するかを事前に計算する必要があります。
点数表は以下となります。
項目 | 基準 | 点数 |
学歴 (20点満点) |
博士号 修士号 学士 |
20 15 10 |
中国での年収 (20点満点) |
45万元以上 35~45万元 25~35万元 15~25万元 7~15万元 5~7万元 5万元未満 |
20 17 14 11 8 5 0 |
関連業務経験年数 (15点満点) |
2年以上から1年毎に+1加算(最高15点) 2年 2年未満 |
15 5 0 |
中国での年間勤務日数 (15点満点) |
9か月以上 6~9か月 3~6か月 3か月未満 |
15 10 5 0 |
中国語(HSK*) *漢語水平考試(中国語検定) |
5級以上もしくは中国語言語学士以上 4級 3級 2級 1級 なし |
10 8 6 4 2 0 |
年齢 (15点満点) |
18~25歳 26~45歳 46~55歳 56~60歳 60歳以上 |
10 15 10 5 0 |
勤務地域 (10点満点) |
西部地区、東北地区 中部地区(国が認めた貧困地区) 上記以外 |
10 10 0 |
世界ランキング100以内大学卒業者やフォーチュングローバル500企業出身者 (10点の加点) |
世界ランキング100以内大学卒業者 フォーチュングローバル500企業出身者 |
10 10 |
地方経済発展への奨励性 |
省毎の基準により奨励性や必要性を判断 | 0~10 |
なぜ変更?外国人を追い出したいのか?
日本の週刊誌などでも今回の新条件は取り上げられ、ネット上でも「中国の外国人締め出し政策だ!」「日本の中国ビジネスはもう終わりだ!」等々、中には過激な表現で批判をする方々も多く見受けられました。
ただ実際にはどうでしょうか。
上述で触れた通り、山東省などの一部地域においては、2016年11月から試験運用として、この新たな就労ビザ条件でのビザ発給が開始をされ、それによって就労ビザ発給の制限が始まっています。
そして、この試験運用を行った上で、この制限・条件が今後緩和される可能性もあるというアナウンスもその際にされています。
中国政府としては、外国人駐在員が担っている外資企業(欧米や日系など)の重要なポジションにおいても、中国人の登用を促進させ、外国人においては中国社会に本当に貢献できる専門的なスキルを持った人材を対象にビザ発給をすることで、現地中国人の雇用確保や人材育成、国の発展につなげたいようです。
ただ、今後緩和される可能性が触れられているのは、中国政府としても、外資企業が一気に撤退や縮小となると、経済への影響も大きいため、状況によってはこの新制度の条件を緩めていくことも想定をしているのではないかと考えられます。
結局条件は変更されず以前のまま!?
2017年4月から施行される新たな就労ビザの条件では、基準に満たない外国人駐在員や現地採用社員が多く発生すると言われています。
そして、現在中国に住んでいる日本人も戦々恐々としながら、ビザが更新できなかったらどうしようと悩んでいる方や企業も多くいます。
しかし、2017年3月現在で人材会社や銀行などが上海市から行っている情報収集では、
- 60歳以下
- 学士以上の学位
- 就業経験2年以上
の3条件を満たせば、自動的にB類に分類するという回答が上海市当局側から出始めており、結局以前の条件が基本は適用されるとい情報が多く出始めています。
もし本当にこれが事実であれば、以前と何も変わらないどころか、60歳を超えるハイレベル人材は新条件により、就労ビザ取得の可能性がむしろ上がる結果となります。
中国においても、省や市でも回答が異なり、また上海市の中の区によっても回答がまだ統一されていない状況です。
そして、まだ本格施行がされてない段階ですのであたりまえかもしれませんが、2017年になってから就労ビザを取得・更新をされた方々の中で、新しい条件ではB類に満たない方も、大きな問題もなく就労ビザが取得・更新ができているようです。
こちらに関しては、引き続き情報収集を図り、都度更新を図っていきます。
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就労ビザの申請・取得の方法・必要書類
就労ビザ取得方法の流れ
1、本人(就業者)が現地企業へ現地申請時に必要な書類を提出
2、現地企業が中国現地当局(管轄の人力資源・社会保障局、対外貿易局など)にて「外国人就業許可証」「被授権単位査証発給通知表」を申請する
3、現地企業が中国現地当局より、「外国新就業許可証」、「被授権単位査証発給通知書」を取得する
4、本人もしくは日本側担当社(現地企業の日本本社等)が日本の中国大使館にて、就労ビザの申請・取得をする
5、本人が中国に赴任後30日以内に、中国現地当局(公安局等)へ居留許可申請・取得をする
手続き方法や流れは頻繁に変更になりますので、最終的にはご自身で在日本中国大使館等のHPで確認をお願いします。*2017年3月時点での情報となります。
就労ビザ取得の必要書類
中国大使館へ就労ビザを申請するとき
- 査証申請書
- パスポート
- 証明写真
- 外国人就業許可書(上記ビザ取得方法の流れ3で取得)
- 被授権単位査証発給通知書(上記ビザ取得方法の流れ3で取得)
- 公的資格の証明書
- 招聘状(現地就業企業が用意)
- 卒業証明書
- 履歴証明書(履歴や職歴がわかる書類、要中国語翻訳)
赴任後に居留証の申請をするとき
- パスポート
- 証明写真
- 外国人体格検査記録(ビザ基準を満たす健康診断結果)
必要書類は頻繁に変更になりますので、最終的にはご自身で在日本中国大使館等のHPで確認をお願いします。*2017年3月時点での情報となります。
複雑かつ頻繁な変更が行われる中国のビザ条件や手続き。新制度に関しても、結局のところ本格運用が始まって時間がある程度経たない限り、断定的な情報がない状況です。
今後も引き続き情報更新を図っていきます。